Thursday, February 25, 2016

創造と神秘のサグラダファミリア - Sagrada, the Movie


サグラダ・ファミリアのドキュメンタリー映画を観た。(恵比寿のガーデン・シネマで夜8時からの上映は今週で終了。)若きガウディがこの教会の設計を引き継ぐことになった経緯とか、フランコ独裁やその後の建設反対運動など、歴史的背景も知ることができるが、着々と完成に向けて進む教会内の様子は僕が10年ほど前に見たまだ色彩感のない光景とはすでに様変わりして、ステンドグラスが入ったことで一段と見事さを増している。

この映画はドイツ人チームの制作で、ナレーションもドイツ語だった。そのせいかどうかは分からないが、音楽はバッハのロ短調ミサ曲が使われていて、演奏にはジョルディ・サヴァールとコンセール・デ・ナシオンが登場する。録音はFontfroide修道院での音楽祭のDVDとは違うように感じた。ここにサヴァールが登場するのは当を得たりと思うのだが、モンセラートにインスピレーションを受けたであろうバルセロナの教会で何を歌うべきなのか、大いに考えるところはあると思う。ロ短調ミサ曲と聖家族教会との共通項をサヴァールは「完成」に向かって進む長い積み重ねの作業と語っていた。そして終えてもまだ終わらない模索が続く。

I saw the movie "SAGRADA el Misteri de la Creació" at Yebisu Garden Cinema (although the show will end this week). We can learn the historic aspects from this movie such as how young Gaudi got involved in the design of this cathedral, the destruction at the time of Franco regime, and the difficulty facing with oppositions to continuing the construction. I recognize the inside has made a significant progress since the time I visited there some 10 years ago. The finish with stained glasses lifts the impression so lively and magnificent.

The movie begins with the German narration, a bit of surprise to me, because this is a production of German team. Whether it is one of reasons or not, the music in this movie was only from Bach's B-minor mass performed by Jordi Saval and le Concert des Nations. It sounded to me a different take from the published DVD  recording at l'Abbaye de Fontfroide. I thought Saval was the ideal choice here, but which music to be put here would have required a lot of consideration. Saval talked in the movie about the common aspect between the B-minor mass and this cathedral: a long process of stacking up pieces for the completion, and it is not where it stops.



ガーデン・シネマはユナイテッドの映画館で、小振りながら座席の良さ、前の人が邪魔にならない菱形レイアウト、床の傾斜度など、気配りされた品質設計の映画館だ。

Garden Cinema is a smallish theater in the United chain with luxurious seats laid out to avoid front seats' intervention as well as the sufficient tilts; all designed for a quality viewing.

Saturday, February 20, 2016

MQAを聴く - Listening MQA Sound

Meridian Prime
英国MeridianのBob Stuartはここ2、3年毎年のように来日して、彼が辿り着いた最新のハイレゾ技術MQAについて啓蒙を続けているが、この技術が1月のCE Showでは大きな脚光を浴び、ネットコンテンツもTidalや2Lから出始めるという状況にまで発展してきた。僕も一度彼の技術プレゼンを聞いたことはあるが、やはり音を聴いてみたいものだと思うようになった。

幸いと言うか、我がリスニングルームのPCオーディオ環境が少し前進を始めたところだ。PCオーディオについては1年くらい前にここでもちょっとだけつまみ食い的に書いたまま、ずっと煮え切らないでいた音楽再生専用目的のMac mini導入にようやく資金メドが立って、late 2012モデルをヤフオクで先日ゲットした。Audirvanaでデコードしたマルチチャンネル音声は目論見通りHDMI経由で正常にAVアンプに送られている。Mac miniはシステム環境設定の「画面共有」を有効にしておけば、別のデスクトップ・マックから画面操作できるので、本体をAV機器のラック周囲に置いても支障はない。僕の場合は仕事机のiMacからの操作で動かしている。理想を言えばAmarraみたいにiPhone/iPadがリモコンになる形態だろうが、Audirvanaにはそこまで器用な機能提供はない。

HDMI上の8ch伝送は上限96kHzのようで、これがMac側の制約なのか受け手のAVアンプ側なのかはまだ調べていないが、それはさて置きMac miniからの音は総じてちょっとシャリシャリ感が強く、なめらか傾向ではないようだ。現状ではCambridge (Oppo)プレーヤーからの音の方がしっくりなのだが、どちらのケースもD/AはAVアンプ側なので、この違いがデコード段階のどこから来るのかは不明だ。昔仕事でコンテンツ再生の実験をしていた頃、iMac経由の音が非常に良かったので余り心配はしていなかったのだが、このままだとやはり適当なUSB-DACに繋いだ場合の音を確認しておく必要を感じる。タイムロードのKさんにお願いして、一度ChordのHugo TTでも拝借したいところだ(!)。それでも2Lサイトから試しにダウンロードしたMQA音源で、いわゆるMQAデコードしないCD相当の互換再生をしてみた際、Vivaldiのレチタティーヴォが意外に自然な奥行き感を出しているのを感じた。通常僕が5.1以上のサラウンド再生に固執するのは、こうした音源で明らかな空間描写の違いがあるからで、2chに切り替えた途端にすごく薄い平面的な左右軸の音場になってしまうからだ。MQA音源はそのまま聴いても音が良くなっているよと言われているので、そのあたりはもう少しじっくり確認してみたいと思っている。

そんな中で先日Meridian Primeを日帰りで持ち込んでもらって試聴する機会を得た。この製品はMQA対応のUSB-DAC兼ヘッドフォンアンプ製品で、市場価格は20数万円の小さな箱。現実にはちょっと手が出ない。まずは持ち込まれたノートPCにデモ音源があるので、USBでPrimeに渡し、RCA出力をこちらのAVアンプのアナログ入力で受けて聴くことにする。オリジナル音源とMQAファイルとの比較試聴だ。最初にNorah Jonesが鳴った瞬間、のっけからハッとさせられる音の良さだ。聴き慣れたCDとは次元が違うんじゃないかと感じる。しかしここではオリジナルとの比較なので次々と曲を聴いていく。192kHzの音源とCD程度のデータ量にたたみ込まれたMQAの音は聞き分けられないくらい近い。音の違いというのではなく、雰囲気に違いがあるのではないかと改めて聴き直すと、その差は判然としなくなる。スピーカー面から先の奥行き表現に長けているのかなというのが瞬間的な第一印象だった。ずっとそんな微妙な繰り返しでこれは合格だなと思う中、いかにもステレオ初期らしい録音のブルーベックのTake Fiveで、アルトサックスの音が唯一の例外だった。オリジナル音源の方が腰太に聞こえたのはむしろ「どうしてそうなるのだろう」と怪訝に思うくらいだった。

折角の機会なので、僕としてはやはりMac miniのAudirvanaからMQAを通して聴きたい。そこでマック用のドライバー(DAC-Uploader)をインストールする必要があった。ところがこのドライバーはOS-X10.9以上を要求してきた。自分のMac miniはそのままでは使えない。急遽、Yosemiteが入っている仕事机のiMacを使うことにする。しかしその為には3mくらいのピン-ピン・ケーブルが必要だ。これも手持ちのシールド線を使って急いで作りあげ、再生に漕ぎ着けた。ここでの試聴は2Lテストベンチのファイルでハイレゾ、CDグレード、MQAをあれこれ比較してみた。結論としてはデータ量が8倍程度のハイレゾ音源と拮抗する音質がMQAで聴ける訳だから、ダウンロード音楽のサプライヤーにとっても聴き手にとっても朗報ということだと思う。Primeからの音はやはりAudirvanaなのだが、なめらか方向に傾いてくれているという印象だった。こうなると$50出してAmarraの音ももう一度真剣に聴いてみるべきだろうか? Meridian製品にはPrimeの他にExplorer2という5万程度のデコーダもあるので、ハードとして狙い目のひとつはそちらになるだろう。


Meridian Explorer 2



Friday, February 19, 2016

薬師池公園と梅園 - Yakushi-Ike Park and Its Plum Garden

梅の季節だ。町田の薬師池公園には梅園があって、高台からの全景も目を楽しませてくれるので、時期を見て行ってみようと考えていた。見頃は2月下旬らしいのだが、今日は暖かく良い天気なので、そろそろ良いかもしれないなと自転車で走り出した。鎌倉から約40km=2時間、全体として走りやすいコースだった。町田の北側は道がやや細いが、そこまでは一本道をひたすら行く部分がほとんどで楽に走れた。肝心の梅は満開の木が数本はあったものの、やはり盛大に咲き誇るのはこれからのようだった。





It's now the season for plum ("Ume") trees! In Yakushi-Ike Park of Machida is a plum garden, and the view from the upper promenade should be wonderful. The best timing is said to be end February, but it was a warm, beautiful day today, and I decided to ride on my bike. It is about 2-hour/40 km tour from Kamakura. The route was quite comfortable in overall: The roads in the north of Machida tended a bit narrow, but otherwise it was mostly a simple road to follow in most part. I saw a few trees in full bloom, but if you want to enjoy a gorgeous view with splashes of blooms in the entire garden, you should patiently delay your visit by a week or so.

Monday, February 15, 2016

Bärenreiter Versions, B-minor Mass - ロ短調ベーレン新旧版楽譜

カミさんが自分用のロ短調ミサ曲楽譜が欲しいと言うので、出掛けたついでに本郷のアカデミアに立ち寄った。ベーレンライター版を手にして見ると、中身の印象がかなり違うことにすぐ気づく。家に帰って比べてみると僕のは1955年版なのだが、新版は2010年だ。一昨年これを歌った時、指揮者が「新版では楽器の表記がなくなった」などと言っていたが、確かにその通り。それ以上に、伴奏パートは音符までもかなり整理されていて、写真のSanctusを見れば明らかだが、例えばまずティンパニがない。和音の数も少ない。旧版が総譜を詰め込んだのに対して、新譜は伴奏用に特化して再編成したのだと思う。
My wife bought a Bärenreither edition of B-minor Mass vocal score for her own use, and I immediately noticed the difference in the content appearance: Mine is 1955 version while her's is 2010. I recall that the conductor mentioned the lack of the instrument indications in the new edition while we sang this music a couple of years ago, but the changes were more drastic. As you can see in the attached pictures, the timpani notes disappeared and there are fewer notes in the harmony in the 2010 copy. The older version simply packed all the orchestral parts, but the new version, I guess, focused on the arrangement for the keyboard accompaniment.


Bärenreiter 1955 Edition
Bärenreiter 2010 Edition


しかも新版には前書き解説が付いていた。読んでみると、この曲の歴史的経緯の説明があり、最新版の立ち位置が解説されていた。最後の章は楽譜を読む際の参考になるので、以下に和訳を書き出しておく。
* * *
ロ短調ミサ曲はどの版でも3つの大きな問題に直面する。初期版に対してどのように対応するのか、バッハの息子たちによる後世の加筆とオリジナルの自筆とをどのように区別するのか、そして自筆譜そのものの不安定な物理的状態ということだ。
とりわけ、キリエとグロリアのパートで成る1733年セットの初期バージョンには数多くの表記があり(オーケストレーションの指示など)、どの版にとっても無視することは難しい。他方、各表記部分はそれぞれ異なる版に属するものということでもある。こうした加筆に配慮しつつ、ふたつの版の分離性を守るために、この楽譜では1733年版からのすべての追加情報は灰色の印刷で提示した。このようにして自筆の音楽表記が明確に見分けできるようになっている。
さらに続く修正、仕上げ、さらにC.P.E.バッハが20年以上の歳月をかけて父の自筆スコアに加えた変更については、肉眼では判別不能なこともしばしばで、これまでは論議の種だった。これを解決すべく、2007年から2008年にかけて、自筆譜から多くのパッセージ(約500箇所に及ぶ)を選んでX線蛍光分析にかけた。オリジナルを傷つけることなくインキの成分分析が可能となる手法だ。ロ短調ミサ曲の場合、C.P.E.バッハの書き込みは父親のそれと区別できたと確信された。対照的に、C.P.E.バッハが関与する以前の楽譜状態の復元については、解決できなかったものもある。
ロ短調ミサ曲の自筆譜に加えられた父バッハや息子バッハによる多くの変更のせいもあって、この楽譜はバッハの自筆譜全体の中でも最も傷みの大きいもののひとつである。特にII部からIV部にかけての損傷が激しい。2002年の修復で手書きの状態は保全されたが、頁から離脱してすでに削られてしまった表記については永遠に失われたのだった。従って我々の今回の版で重要な情報源のひとつとなったのは1924年出版のファクシミリで、遙かに良好な手書きの状態を提示していた。欠損箇所は存在せず、あっても小さいものが多く、頁を通してほぼ判別が可能だった。こうしてすべての損傷パッセージを1924年ファクシミリ版と突き合わせ、適用可能なものはこの版に取り込んだ。1924年にすでに損傷していたパッセージについては、並行処理や最も初期の写譜師原稿に基づいて復元した。大きく修正が加えられたパッセージというのは、専らインキ退化の影響が酷いもので、今日損傷状態にあるパッセージは息子バッハが手を加えた部分である可能性が高い。現存する写譜師の原稿でC.P.E.バッハの最初の関与より遡る時期のものはないので、これらパッセージのオリジナルはどうであったかについてもいかなる確度の再構築も最早不可能である。それらはこの楽譜では括弧で括っている。
この版で我々が目指したのは、J.S.バッハの本来の意図にできる限り近づき、一方でそれが不可能な箇所や、他の版に基づく修復で可能となった箇所を明記することである。読者の方々には、更なる詳細は総譜版の前書きと重要報告の頁を参照されたい。

Monday, February 8, 2016

手白沢温泉 - Teshirozawa Hotsprings

スノーウォークがしたいと登山エキスパートの友人に話したら、日光の奥の温泉に行こうとプランを組んでくれた。2年前に膝を痛めて以来、山歩きは控えていたので初の復帰トレッキングということになる。東武日光線で鬼怒川温泉に朝10時に着き、バスで女夫渕温泉まで(1540円)入る。そこから先は車の乗り入れは禁止で、八丁ノ湯と加仁湯に宿泊する客には送迎サービスがある。それ以外は歩きで入山だ。往路は川沿いの遊歩道を歩いた。登坂はないに等しいが雪道なので加仁湯まで2時間強の道のり。ルートはすでにずっと足跡があるので迷うことはない。我々が目指す手白沢温泉は加仁湯のさらに先で、標高も1500m近くなるのでそこはほぼ一本調子の登り道だ。このエリアへの訪問は二人とも40数年ぶりだったので、すべて様変わりだった。

I told about my desire of a snow-walking to a friend of mine who is a mountaineering expert, and he made a plan to visit a hot spring deep beyond Nikko. I have refrained from climbing since I damaged my ligament a couple of years ago, therefore this was actually the first recovery trekking for me. We arrived at Kinugawa-Onsen station of Tobu-Nikko Line around 10:00 in the morning, and took a bus for Meotobuchi-Onsen. Further beyond, no cars are allowed except shuttle services for those staying at Haccho-no-yu or Kaniyu lodgings. Other visitors have to walk all the way, and we took the hiking road along the river. No real climbing but it will take about 2.5 hours to Kaniyu in the snow. It is least stressful as there are footsteps in the snow that you can simply follow. Our destination, Teshirozawa-Onsen, is further up with the altitude of almost 1500m to cost you some 40 minutes more of going up. Both of us once visited this area more than 40 years ago (individually), and everything looked totally different!


Approaching Kinugawa-Onsen
左に男体山の山並み
Kawamata Lake 川俣湖
Meotobuchi-Onsen Bus Terminal
女夫渕温泉のバス終点
Such a mean behavior stealing a portion of interest from the guide display!
案内板の欲しい所を破り取った許しがたい輩の仕業

Frozen Waterfall - 凍結滝

八丁ノ湯 Haccho-no-Yu
手白沢温泉 Teshirozawa-Onsen
Indoor Bath - 内湯
Outdoor Bath - 露天風呂
 手白沢温泉は19年前に改装したそうで、昔の山小屋風の面影はなく旅館に近い雰囲気だ。宿泊費はこの時期で14,500円となかなかの金額だ。到着早々、我々は風呂に浸かって冷えた身体を温めた。硫黄の臭いがうれしい内湯はかなり熱く感じられたが、翌朝入った時にはそれほどでもなかったので、こちらの調子次第なのかも知れない。風呂上がりにどっと疲れが出た感じで、夕食まで居眠り状態だった。全館暖房で、就寝時は部屋が暑くて汗をかいてしまい、結果あまり良く眠れなかった。夜中は敢えて16℃くらいまで温度を下げるか、部屋ごとに調節が出来るとありがたいと思う。
翌日9時過ぎに宿を出て、帰路は林道を行った。ここを通過する車はふたつの宿の送迎バスくらいなので、気ままな散策という感じで歩ける。しかしほとんどずっと下り道だったので、急峻ではないが往路にすると不可があるのかも知れない。
今回の旅で夏の計画をひとつ思い付いた。次は日光沢に泊まり、そこから鬼怒沼と湿原を歩き、八丁ノ湯の丸ログハウスにも宿泊したい。新宿から鬼怒川温泉に直通乗り入れ特急もあるので、女夫渕までは自転車で頑張るというアイディアも可能かも知れない。

Teshirozawa-Onsen lodging was renovated 19 years ago that now looks more like a standard "ryokan" than a classic mountain lodge. The fee was somewhat expensive 14,500 Yen per night incl. 2 meals. We immediately took bath after arrival as our body was chilly enough in the long walk. The water in the tub was quite hot but good with sulfur smell. Outdoor bath wasn't hot as the outside temperature was below zero. The entire lodging was air-conditioned and it was rather hot while sleeping as I was sweating. It should be lowered to 16 degrees or so, or it would be nice if controllable in each room.
We departed around 9 in the next morning, and took the wider traffic road ("Rindo" = forrest road). The actual vehicles were only the shuttles of two lodgings, therefore we enjoyed a relaxed walk. As it was basically a downhill all the way which indicated going up the opposite direction might build up your fatigue.
I had a good idea of next visit this time, which is to stay at Nikkozawa and have a whole day hiking to Kinu Marsh and Moor. I would also like to stay in the Haccho-no-Yu log house. Coupling it with a bike ride up to Meotobuchi may be possible and exciting, too.