Saturday, February 20, 2016

MQAを聴く - Listening MQA Sound

Meridian Prime
英国MeridianのBob Stuartはここ2、3年毎年のように来日して、彼が辿り着いた最新のハイレゾ技術MQAについて啓蒙を続けているが、この技術が1月のCE Showでは大きな脚光を浴び、ネットコンテンツもTidalや2Lから出始めるという状況にまで発展してきた。僕も一度彼の技術プレゼンを聞いたことはあるが、やはり音を聴いてみたいものだと思うようになった。

幸いと言うか、我がリスニングルームのPCオーディオ環境が少し前進を始めたところだ。PCオーディオについては1年くらい前にここでもちょっとだけつまみ食い的に書いたまま、ずっと煮え切らないでいた音楽再生専用目的のMac mini導入にようやく資金メドが立って、late 2012モデルをヤフオクで先日ゲットした。Audirvanaでデコードしたマルチチャンネル音声は目論見通りHDMI経由で正常にAVアンプに送られている。Mac miniはシステム環境設定の「画面共有」を有効にしておけば、別のデスクトップ・マックから画面操作できるので、本体をAV機器のラック周囲に置いても支障はない。僕の場合は仕事机のiMacからの操作で動かしている。理想を言えばAmarraみたいにiPhone/iPadがリモコンになる形態だろうが、Audirvanaにはそこまで器用な機能提供はない。

HDMI上の8ch伝送は上限96kHzのようで、これがMac側の制約なのか受け手のAVアンプ側なのかはまだ調べていないが、それはさて置きMac miniからの音は総じてちょっとシャリシャリ感が強く、なめらか傾向ではないようだ。現状ではCambridge (Oppo)プレーヤーからの音の方がしっくりなのだが、どちらのケースもD/AはAVアンプ側なので、この違いがデコード段階のどこから来るのかは不明だ。昔仕事でコンテンツ再生の実験をしていた頃、iMac経由の音が非常に良かったので余り心配はしていなかったのだが、このままだとやはり適当なUSB-DACに繋いだ場合の音を確認しておく必要を感じる。タイムロードのKさんにお願いして、一度ChordのHugo TTでも拝借したいところだ(!)。それでも2Lサイトから試しにダウンロードしたMQA音源で、いわゆるMQAデコードしないCD相当の互換再生をしてみた際、Vivaldiのレチタティーヴォが意外に自然な奥行き感を出しているのを感じた。通常僕が5.1以上のサラウンド再生に固執するのは、こうした音源で明らかな空間描写の違いがあるからで、2chに切り替えた途端にすごく薄い平面的な左右軸の音場になってしまうからだ。MQA音源はそのまま聴いても音が良くなっているよと言われているので、そのあたりはもう少しじっくり確認してみたいと思っている。

そんな中で先日Meridian Primeを日帰りで持ち込んでもらって試聴する機会を得た。この製品はMQA対応のUSB-DAC兼ヘッドフォンアンプ製品で、市場価格は20数万円の小さな箱。現実にはちょっと手が出ない。まずは持ち込まれたノートPCにデモ音源があるので、USBでPrimeに渡し、RCA出力をこちらのAVアンプのアナログ入力で受けて聴くことにする。オリジナル音源とMQAファイルとの比較試聴だ。最初にNorah Jonesが鳴った瞬間、のっけからハッとさせられる音の良さだ。聴き慣れたCDとは次元が違うんじゃないかと感じる。しかしここではオリジナルとの比較なので次々と曲を聴いていく。192kHzの音源とCD程度のデータ量にたたみ込まれたMQAの音は聞き分けられないくらい近い。音の違いというのではなく、雰囲気に違いがあるのではないかと改めて聴き直すと、その差は判然としなくなる。スピーカー面から先の奥行き表現に長けているのかなというのが瞬間的な第一印象だった。ずっとそんな微妙な繰り返しでこれは合格だなと思う中、いかにもステレオ初期らしい録音のブルーベックのTake Fiveで、アルトサックスの音が唯一の例外だった。オリジナル音源の方が腰太に聞こえたのはむしろ「どうしてそうなるのだろう」と怪訝に思うくらいだった。

折角の機会なので、僕としてはやはりMac miniのAudirvanaからMQAを通して聴きたい。そこでマック用のドライバー(DAC-Uploader)をインストールする必要があった。ところがこのドライバーはOS-X10.9以上を要求してきた。自分のMac miniはそのままでは使えない。急遽、Yosemiteが入っている仕事机のiMacを使うことにする。しかしその為には3mくらいのピン-ピン・ケーブルが必要だ。これも手持ちのシールド線を使って急いで作りあげ、再生に漕ぎ着けた。ここでの試聴は2Lテストベンチのファイルでハイレゾ、CDグレード、MQAをあれこれ比較してみた。結論としてはデータ量が8倍程度のハイレゾ音源と拮抗する音質がMQAで聴ける訳だから、ダウンロード音楽のサプライヤーにとっても聴き手にとっても朗報ということだと思う。Primeからの音はやはりAudirvanaなのだが、なめらか方向に傾いてくれているという印象だった。こうなると$50出してAmarraの音ももう一度真剣に聴いてみるべきだろうか? Meridian製品にはPrimeの他にExplorer2という5万程度のデコーダもあるので、ハードとして狙い目のひとつはそちらになるだろう。


Meridian Explorer 2



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